決議・声明

福岡・東京高裁判決を受け、改めて、すべての人にとって平等な婚姻制度の速やかな実現を求める会長声明

2025.01.22

1 同性間の婚姻ができない現在の婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定(以下「本件諸規定」という。)の違憲性を問う一連の訴訟において、2024(令和6)年10月30日に東京高等裁判所で、同年12月13日に福岡高等裁判所で、それぞれ違憲判決が出された。

一連の訴訟は、札幌・東京(一次・二次)・名古屋・大阪・福岡の各地裁の判決が出され、いずれも原告側が控訴していたところ、上記2高裁判決は、同年3月14日の札幌高裁判決に続く、高裁における2件目、3件目の判断である。

 

2 東京高裁判決は、憲法24条及び14条1項に違反するとした札幌高裁判決に引き続き、明確に、本件諸規定の違憲性を指摘した。

すなわち、同判決は、民法は、男女の夫婦とその間に生まれた子からなる家族を一般的に想定しているものの、この一般的な想定の全体にあてはまる家族だけを社会的に正当な家族のあり方と認めているわけではないとし、婚姻は、子の生殖よりも当事者間の永続的な関係を重視したものと理解されてきた旨指摘した。そのうえで、婚姻をすることで、自らの自由意思により人生の伴侶と定めた相手との永続的な人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成ができることは、安定的で充実した社会生活を送る基盤をなすものであり、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益として十分に尊重されるべきものとした。

そして、同性に性的指向が向く者については、こうした個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益やそれに伴う法的効果が、本人の意思で選択や変更することができない性的指向という属性により与えられていないという区別が生じているところ、こうした区別により生じる不利益は重大であり、区別に合理的根拠があるとはいえないとし、性的指向が同性に向く者について、現行法令が、民法739条に相当する配偶者としての法的身分関係の形成にかかる規定を設けていないことは、憲法14条1項及び24条2項のいずれにも違反すると判断した。

 

3 また、福岡高裁判決も、上記2判決に引き続き、本件諸規定の違憲性を正面から認定した。

同判決で特徴的な点は、一連の訴訟の判決において初めて、本件諸規定について憲法13条違反を指摘したことである。すなわち同判決は、婚姻をするかどうか、誰を婚姻の相手として選ぶかについては、両当事者の自由かつ平等な意思決定に委ねられており、その意味で、婚姻についての個人の尊厳が保障されているとした。さらに、憲法は、婚姻について個人の自由を保障するだけにとどまらず、婚姻の成立・維持について法制度による保護を受ける権利をも認めており、これは、憲法13条が認める幸福追求権の一つであるとしたうえ、幸福追求権としての婚姻について法的な保護を受ける権利は、個人の人格的な生存に欠かすことのできない権利であり、裁判上の救済を受けることができる具体的な権利であるとした。そのうえで、こうした権利は、男女のカップルも異性のカップルも等しく有しているにもかかわらず、両当事者が同性である場合には、婚姻にかかる法制度を設けず、法的保護を与えないことは、同性を伴侶として選択する者が幸福を追求する途を閉ざすものであると批判し、同性カップルを婚姻制度の対象外とする本件諸規定は幸福追求権の侵害であって憲法13条に反するものであると断じた。

また、同判決は、同性カップルを婚姻制度の対象外とすることについては、合理的な根拠なく同性カップルを差別的に取り扱うものであって、憲法14条1項に違反すると、本件諸規定のうち、同性のカップルを婚姻制度の対象外とする部分は、個人の尊厳を定めた憲法13条に反するのだから、婚姻に関する法律は個人の尊厳に立脚して制定されるべき旨を定める憲法24条2項に違反すると、それぞれ判断した。

さらに同判決は、一連の訴訟の中でたびたび言及されてきた、婚姻ではない別制度を設けるという選択肢に対し、「幸福追求権としての婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利は、男女のカップル、同性のカップルのいずれも等しく有していると解されるから、同性カップルについて法的な婚姻制度の利用を認めないことによる不平等は、パートナーシップ制度の拡充又はヨーロッパ諸国に見られる登録パートナーシップ制度の導入によって解消されるものではなく・・・同性のカップルに対し、端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法14条1項違反の状態は解消されるものではない」と、明確にこれを否定した。この点は、極めて画期的な判断である。

 

4 一連の訴訟では、地裁レベルとしては、大阪地裁を除く4地裁5判決において、本件   諸規定を違憲ないし違憲状態とする判断が出ていた。

高裁レベルにおいては、札幌高裁判決、そして今回の上記2判決のいずれもが、明確に本件諸規定を違憲であると判断し、また、原告側が憲法違反であると主張していた憲法13条、14条1項、24条1,2項のいずれについても、違憲性が指摘されたことになる。

また、福岡高裁判決は、現時点での立法不作為による国家賠償責任は否定しつつも、「本件立法不作為すなわち本件諸規定を改廃等しないことは、国家賠償法上の責任を生じさせ得るものである」としており、国による立法行為を強く促している。

もはや、これ以上の立法・施策の懈怠は、一切許されない状況であり、一刻も早い法整備が求められる。

 

5 当会は、2021(令和3)年6月2日、2023(令和5)年3月2日、同年6月21日と3度にわたり会長声明を発し、すべての人が平等に婚姻できるような法整備等を速やかに行うことを強く求めてきた。

当会は今後も、性的少数者を含めたすべての人にとって平等な婚姻制度の実現に向け、努力していく所存である。

 

2025(令和7)年1月22日

鹿児島県弁護士会

会長 山口 政幸

一覧へ戻る

ページのトップへ戻る
新型コロナウイルスの影響で借入金返済にお困りの方へ
無料法律相談カレンダーのご案内
法律相談会場のご案内
法律相談窓口
司法過疎地域巡回無料法律相談
ひまわりほっとダイヤル
ひまわりお悩み110番
弁護士無料派遣
災害特設ページ
鹿児島県弁護士会へのお問合せ
鹿児島県弁護士会会員ページへログイン
鹿児島県弁護士会CM