決議・声明
最低賃金額の引上げ等を求める会長声明
例年、厚生労働大臣は、6月頃に中央最低賃金審議会に対し、その年度の地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い、同審議会は7月頃に答申を行う。
昨年、同審議会は、全国加重平均41円の引上げ(全国加重平均1002円)を答申したところ、これに基づき各地の地方最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定され、全国加重平均43円の引上げ(全国加重平均1004円)となった。鹿児島県の最低賃金については、昨年、最低賃金額の地域間格差を解消することを目的として、従来の全国各都道府県をAからDの4段階に分けてそのランク毎に引上額の目安を呈示していた方法を改め、AからCの3段階に変更した結果、これに基づきCランクに位置づけられ、鹿児島地方最低賃金審議会において、最終的に鹿児島県の時給は最低額897円(令和4年度の853円から44円増、引上げ率5.16%)と定められた。
しかし、時給897円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても月収約15万6000円、年収約187万円にしかならない。近年、極端な円安やロシアのウクライナ侵攻の影響等により、消費者物価の大幅な上昇が続いており、国民において、食料品や光熱費など生活の基礎となる部分で、一連の価格高騰のあおりを受け、これまでにない家計の負担に苦しむ状況が続いており、労働者の安定した生活を実現するという観点から見て、この賃金水準では依然として不十分であるといわざるを得ない。そのため、最低賃金の引上げの動きを後退させてはならない。
また、最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも見過ごすことのできない重大な問題である。令和5年度の最低賃金について、最も高い東京都で時給1113円であるのに対し、最も低い岩手県は時給893円と、実に220円もの開きがある。
しかしながら、最近の調査によれば、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、都市部と地方との間で大きな差はないことが明らかになってきている。そのため、今日においては最低賃金の地域間格差をなくすため全国一律最低賃金制度を実現すべき段階にきているところ、仮に直ちには同制度を実現できないとしても、地方における最低賃金水準をこれまで以上に大幅に引き上げることで可能な限り都市部との格差を解消することが求められる。
以上の次第で、最低賃金の引上げによって労働者の安定した生活を確保するため、当会は、中央最低賃金審議会に対して、地域間格差を縮小しながら全国全ての地域において最低賃金額の大幅な引上げを答申することを求める。
2024年(令和6年)6月12日
鹿 児 島 県 弁 護 士 会
会 長 山 口 政 幸