決議・声明
オンラインによる接見交通の実現を求める会長声明
1 現在,刑事手続のIT化の議論が,法務省の「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」(以下「本検討会」という。)で進められている。本検討会では刑事手続において情報通信技術を活用する方策に関し,現行法上の法的課題を抽出・整理した上で,その在り方が検討されている。
本検討会における主な論点項目は,「書類の電子データ化,発受のオンライン化」「捜査・公判における手続の非対面・遠隔化」であり,この中に,被疑者・被告人との接見交通が含まれている。
2 現在,日弁連では,逮捕段階における公的弁護制度の創設を議論している。
逮捕段階からの充実した弁護活動を可能にするためには,逮捕されて間もない時点における迅速な接見が実現されなければならない。オンラインを活用した接見交通の必要性は高い。
また,身体を拘束された被疑者・被告人が十分な防御準備をするためにも,書類の授受を含む接見交通のオンライン化の必要性がある。
特に,鹿児島県は,薩摩半島,大隅半島という二つの半島,種子島,屋久島,奄美大島をはじめとする多くの離島があり,接見交通に要する往復の時間が多大になることもある。どこの警察署で逮捕されるかにかかわらず,迅速な接見交通を実現するためには,オンラインの方法による接見交通の実現が強く望まれる。
3 本検討会における議論の中で,オンラインを活用した接見交通については,設備や予算などの問題が指摘されているようである。しかし,新たな設備の整備が必要なのは,令状手続のオンライン化をはじめとする刑事手続のIT化全般に妥当することである。遅滞なく通信し,協議するための十分な機会,時間及び設備を提供されなければならないことは,国連被拘禁者処遇最低基準規則にも定められているところであり,被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利を実現するための設備等も当然に国の責任において提供されるべきである。
4 刑事手続のIT化の議論において,被疑者・被告人の人権保障を拡充するという観点からの議論が置き去りにされてはならない。当会は,オンラインを活用した接見交通の実現に向け,本検討会にて更に具体的な議論が尽くされることを期待する。
2021(令和3)年12月21日
鹿児島県弁護士会
会長 保 澤 享 平