決議・声明

割賦販売法の改正に関する声明

2006.11.14

割賦販売法の改正に関する声明

高齢者や若年者をターゲットにして、住宅リフォーム工事や呉服・寝具、宝石など高額な契約をさせる悪質商法が社会問題化して既に久しい。これらの社会問題に対しては、その時々に応じて必要な法律を改正することで対応してきたが、法規制の網にかからない新たな悪質商法が次々と生み出されるなど、必ずしも抜本的な対応が取られてきていたとは言い難い。

さらに、今日においては、クレジットが利用されることにより、被害額がより高額となる事例も多くなっている。本県では、その地域特性から、床下換気やシロアリ駆除などを謳った悪質リフォームに関する案件が多く、1件1件の額が高額であるばかりではなく、次々販売により、さらなる被害の拡大を招くという事態も珍しくはない。
特に、年金生活者がこうした被害にあって、預貯金のすべてを失った上に、多額のクレジットを抱え、その支払いのために年金を担保に融資を受けたり、その返済のために消費者金融に手を出すなどして、生活に見通しがたたなくなるという例も少なくない。

このような状況の下、経済産業省の産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会は、2006年6月7日、「クレジット取引にかかる課題と論点整理について」(以下「論点整理」という)をまとめ、クレジット取引の適正化に向けての問題点を指摘した。
この論点整理は、消費者保護の観点から、悪質な勧誘販売行為を助長するような不適正与信の排除に向けたクレジット事業者の対応や法的責任について検討すべきである、という内容を有しているところ、この点評価しうるものである。

ところで、日本弁護士連合会は、これまで改正の具体的内容について提言等をまとめてきている。当会は、この提言等に賛成するものであるが、論点整理は、これら提言等の内容に照らして、同一の方向を指向していると理解されるものの、なお具体性に乏しい面は否定し得ない。現状のクレジット被害が深刻な状況であることに鑑みるとき、当会は、悪質な勧誘行為や悪質商法を助長する不適正な与信を排除し、被害を防止するため下記の条項を盛り込んだ、割賦販売法の抜本的改正を求める。

1 信販会社の加盟店管理義務を明記し、これに違反した場合、民事上の責任を負うものとすべきである。

クレジットが悪質商法に利用される一つの要因として、信販会社による販売店(加盟店)の管理が不十分なことはこれまでも再三指摘されてきたところである。クレジット取引は、販売契約と与信契約が不可分であり、信販会社は、まさに販売店の営業活動によって利益を得ているという関係にある。販売店は、信販会社にとっては、いわば履行補助者としての位置づけさえ可能なのである。しかれば、このような密接な関係に鑑みて、クレジット被害防止のため、信販会社は販売店の履行の確実性等を審査・管理すべきであって、購入者に対しても販売店と同様の責任を、共同して負うべきである。

2 抗弁対抗の効果は、既払い金の返還請求にまで及ぶものとすべきである。

現行割賦販売法30条の4は、抗弁対抗の効果として、未払い金の支払い停止しか規定していない。しかし、どの時点で問題が発覚したかによって購入者の利害状況を異にすることに合理性はない。また、信販会社として、問題が発覚するまで販売店の営業活動を容認することで利益を得ることとなって、被害拡大の一因とさえなっている。信販会社の加盟店管理義務を徹底する上でも、また、販売店は、クレジット契約に関しては信販会社の履行補助者というべきである点からも、抗弁対抗の効果として、信販会社に対して、既払い金の返還義務を認めることが必要であり、相当であると言うべきである。

3 信販会社による、過剰与信禁止違反に対して、行政上の措置の他、請求権の制限など民事的な効果を規定すべきである。

クレジットにかかる過剰与信は、多重債務者を多発させる一つの要因であると指摘できるところであるが、この規制に関して、現行割賦販売法38条は、これを禁止しているものの、制裁措置がなく単なる訓示規定にとどまっており、実効性が全くみとめられなかった。しかれば、過剰与信の禁止を実効あらしめ、多重債務者の多発を防止するためには、信販会社に対して過剰与信禁止の違反に対して、請求権の制限など民事的制裁を伴う規定にする必要がある。

4 クレジット契約について、割賦販売法を適用する取引を限定している政令指定商品制を廃止すべきである

現行割賦販売法は、指定商品制を採用し、悪質商法が問題となる毎に、指定商品を拡大させて悪質商法に対応してきた。この手法は、爾後当該商品が悪質商法に利用されなくなるという意味においては有効であるが、他方、規制から漏れる商品を対象とする新たな悪質商法に対処することができないという問題点を有する。これまでの悪質商法の歴史は、まさにこの問題点を浮き彫りにするものである。このようないたちごっこを避けるためには規制を一般化することが必要であり、現行割賦販売法が採用する指定商品制は廃止すべきである。

2006年(平成18)年11月14日
鹿児島県弁護士会 会 長 川村重春

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