決議・声明
検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明
1 政府は、本年1月31日、東京高等検察庁検事長の定年を半年延長する閣議決定を行った。
検察官の定年について、検察庁法第22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」と定めている。
検察庁法は、検察官には例外を認めない旨の政府答弁を経て、国家公務員法の特別法として、1947年に制定されたものである。また、1981に定年及び定年延長を導入する国家公務員法改正案が審議された際にも、検察官にこの規定は適用されない旨の答弁がなされている。
検察官については、これまで一貫して検察庁法に基づく独自の定年退官の制度として同法22条が適用されてきたのである。
2 ところが、政府は、これまでの公権解釈では検察官は定年延長ができないとされてきたが、検察官にも国家公務員法81条の3による勤務延長の規定が適用される旨答弁し、この法解釈を変更したと主張し、上記閣議決定を行った。
しかし、この閣議決定は、立法府が定めた法制度の枠組みを超えており、法治主義に反することは明らかである。
検察官は、公益の代表者として政治的な中立性が求められ、政治家をも起訴するという強力な権限を有している。内閣が法治主義に反する違法な定年延長によって検察の人事に干渉することを許すことになれば、検察官の独立が侵され、検察官は公正な職責を果たせなくなる。
3 このように、閣議決定が法を蹂躙するとして厳しく指摘されている中で、政府は、3月13日、国家公務員法等の一部を改正する法律案(検察庁法の一部改正を含む)を国会に提出した。
同改正案によると、検察官の定年を63歳から65歳に段階的に引き上げ、63歳になった者は、原則として最高検次長検事、高検検事長、検事正という役職に就任できなくなるところ、「内閣」が「職務遂行上の特別の事情を勘案し(中略)内閣が定める事由があると認めるとき」に該当すると判断すれば、特例措置として63歳以降もこれらの地位を続けさせられることになっている。
改正案によれば、結局、時の内閣の意向次第で、検察官の人事が可能になり、権力犯罪をも捜査し、起訴するという強い権限を持つ検察官の独立性・公平性が担保されている検察庁法の趣旨が根底から揺るがされることになる。
4 当会は、検察官定年延長の閣議決定を撤回するとともに、及び国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち、検察官の定年ないし勤務延長に係る「特例措置」に係る部分の撤回を求め、三権分立を定めた憲法の基本理念を遵守し、検察官の独立性が維持されることを強く求めるものである。
2020(令和2)年3月27日
鹿児島県弁護士会
会長 笹 川 理 子