決議・声明
自死生徒の遺族からの人権救済申立てに係る当会の出水市教育委員会に対する会長声明
平成23年9月1日、鹿児島県出水市の中学2年生の生徒が、自ら命を絶って轢死するという事故が発生した。
そして、平成24年2月1日、当会に対し、死亡した生徒の遺族から、学校内でいじめがあったのではないか、また出水市教育委員会の調査やその報告が不十分であるとの人権救済申立がなされた。
当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする団体であるところ、市民から人権救済の申立てがなされた場合には、申立てにかかる人権が不当に侵害されてないかを調査・判断し、侵害されたまたは侵害されるおそれのある人権については、それを擁護すべき社会的役割を負っている。
そこで、当会は、本件につき、亡くなった生徒の人権及び遺族の権利擁護のため、まずは出水市教育委員会の調査及び遺族に対する報告について調査を行った。
そして、当会が、遺族及び関係者からの聞き取り、本件に関する各種資料、出水市教育委員会が公表した報告書等を踏まえて検討した結果、当会は、「今回の事故の直接のきっかけとなる出来事は確認できなかった」とする出水市教育委員会の判断には、その判断に至る過程における調査が不足し、あるいはその判断に至った説明に不十分な点が存在すると判断した。
出水市教育委員会の調査の不足及び説明が不十分である点は、命を絶たざるを得なかった生徒の尊厳を害するものであり、さらには残された遺族らの精神的苦痛や知る権利にも配慮を欠くものである。
そこで、当会は、出水市教育委員会に対し、遺族に対するより具体的な調査結果の報告をすべきであり、または調査が不十分であったのであれば、その点については再度調査を行うべきであるとの勧告をすることとした。
あわせて、当会としては、出水市教育委員会に対し、今後は些細な兆候でもいじめではないかとの疑いを持って見逃すことのないよう教職員の認識を徹底させていじめを積極的に認知し、いじめを受けた生徒の心身に深刻な事態を招くことのないよう早期対応を徹底し、さらにはそれらの事情につき十分な調査を行うとともに、その結果については児童生徒本人や親族等に対して十分に説明責任を果たすよう期待するものである。
以上
2020(令和2)年3月19日
鹿児島県弁護士会
会長 笹 川 理 子