決議・声明

大崎事件第2次再審請求に関する支援決議

2010.10.15

1.大崎事件について
大崎事件とは、1979年10月15日、鹿児島県大崎町において原口アヤ子さん(当時 中村)の義弟の遺体が、同人の牛小屋の堆肥の中に埋められていたのが発見されたことに端を発し、殺人、死体遺棄事件として起訴された事件である。原口アヤ子さんは、当初から自分は事件に関係ないと争ったが、その訴えは裁判所に届かず、1980年3月31日、懲役10年の実刑判決を言い渡された。その後、最高裁判所まで争ったが、1981年1月30日に上告棄却となった。
アヤ子さんは逮捕されてから今日に至るまで、ただの一度も犯行を認めたことはない。逮捕直後の厳しい取調べにも屈せず、また服役中の刑務官からの「罪を認めれば仮釈放される」との誘いも拒否し、一貫して無実を訴え続けている。

2.第1次再審請求申立事件の経過
1995年4月19日、アヤ子さんは再審開始の申立を行った。2002年3月26日、鹿児島地方裁判所は再審開始決定を出したが、福岡高等裁判所宮崎支部は検察官の即時抗告を認め、再審開始を取消した。アヤ子さんの特別抗告に対し、最高裁判所も2006年1月30日「抗告棄却」の決定をした。アヤ子さんは絶望の淵に立たされた。

3.第2次再審請求申立について
しかし、裁判所の再審への厚い壁にもかかわらず、原口アヤ子さんは「なにもやっていない」との思いで立ち直り、4年半の年月を経た2010年8月30日、原口アヤ子さんと弁護団は、鹿児島地方裁判所に第2次再審申立をした。
大崎事件において、アヤ子さんを有罪とした判断を支えているのは、共犯者とされる三人、及びそのうちの一人の妻の供述のみである。しかしこれらの供述は、不自然、不合理な内容に満ち、かつ多くの点で相互に矛盾している。
弁護団は、本再審で、新たな証拠として、上野正彦医師の法医学鑑定書、カーペット等再現実験報告書、供述心理分析鑑定書、吉牟田直医師の意見書等を提出した。概要は以下のとおりである。
①法医学鑑定書
確定判決が認定する殺人手段としての「タオルによる絞殺」は、本件遺体の状況からして、法医学上矛盾する旨を述べた鑑定書である。この点はすでに第1次再審で提出してきた各法医学鑑定結果とも一致符合する。
②カーペット等再現実験報告書
確定判決が採用した中で唯一の客観的証拠ともいえるものとして現場にあったカーペットがあるが、その汚れの位置が、共犯者とされる者の自白供述及びそれに基づく確定判決が認定した一連の犯行態様と矛盾していることを明らかにするというものである。
③供述心理鑑定書
確定判決が有罪の最も重要で直接的な証拠とする、共犯者とされる者の自白供述について、それが体験供述としての特性を有しているか否かに関する供述心理学の専門家の鑑定書である。各自白供述には体験供述としての特性を見出すことはできず、それらの信用性には疑いが残るとして、自白供述が信用できないことを明らかにするというものである。
④精神科専門医の意見書
共犯者とされた一人の入通院治療を担当した経験豊富な臨床医の意見書である。彼が知的障がいを有し、迎合的で被暗示性を有し、自己を粘り強く守ることができない性格であったことを明らかにし、同人の取調段階の自白供述に信用性がなく、第1次再審請求審における犯行を否認する証言に信用性が認められることを明らかにするというものである。

4.弁護団は、以上の新証拠と確定審及び第1次再審請求審における証拠とを総合した場合、共犯者らの供述の信用性が減殺され、確定審判決の有罪判決に対し合理的な疑いが生じ、アヤ子さんが無罪であることが明らかになると主張している。
鹿児島県弁護士会としては、原口アヤ子さんの一貫した無罪の訴え、共犯者とされる人たちの自白供述が厳しい取調べの結果なされた疑いが存在すること、上記の有力な新証拠の存在に鑑み、原口アヤ子さんの無罪を確信する。よって、大崎事件第2次再審請求申立を支援することを決議する。

2010(平成22)年10月15日

鹿児島県弁護士会
会長 鳥丸 真人

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