決議・声明

全面的な国選付添人制度の実現を求める会長声明

2010.07.20

少年審判手続において,弁護士付添人は,少年法の目的である「少年の健全な育成」を期するため,非行事実の適正な認定と保護処分の必要性の適正な判断を求めて,少年のために法的支援を行う。少年は,家庭環境に恵まれず,あるいは学校で疎外され,ときに大人社会全体への不信感を持つこともある。弁護士付添人は,少年が心ならずも非行に及んだとき,少年との面会を通じて内省を深めさせるとともに,少年と保護者との関係を調整して家庭環境を整え,学校や職場にも少年の社会復帰後の受け入れを働きかけ,被害者への弁償等に奔走するなど,少年の立ち直りに向けて,総合的に支援する活動を行っている。
少年事件において弁護士付添人を選任すべき必要性と有用性は極めて高いにもかかわらず,実際に弁護士付添人が選任される例はまだ少ないのが現状である。2008年の統計によると,少年審判に付された少年は年間54,054人であり,弁護士付添人の選任率は,少年審判を受けた少年全体では約8.5%,少年鑑別所に収容され身体拘束を受けた少年では約40%に過ぎない。
成人に比べて自らを防御する能力が弱く,ともすると強制や誘導といった取り調べに屈してしまう危険性の高い少年については,弁護士付添人が少年審判手続に関与する必要性は,成人の刑事事件以上に高いというべきであるが,成人の刑事事件において約98.7%の被告人に弁護人が選任されていることと比較すれば,少年に対する法的支援は不十分である。現行法の下では,少年審判における国選付添人は,対象事件が一定の重大事件に限定され,しかも家庭裁判所が必要と認めた場合に裁量で付されるにとどまる。
さらに,平成21年5月から,被疑者国選弁護事件の対象が必要的弁護事件にまで拡大されたが,少年については,捜査段階では国選弁護人が選任されていたのに,家庭裁判所に送致された後は国選付添人が選任されないケースが生じ,いわば「置き去りにされた少年」という制度上の矛盾が表面化する事態となっている。
日本弁護士連合会は,少年に対する法的援助を保障する観点から,全会員の特別会費による少年保護事件付添援助制度を設け,国選付添人の対象とならない少年にも私選付添人費用を援助してきた。当会においては,2003年から年少当番付添人制度を導入し,観護措置決定により少年鑑別所に収容された16歳未満の少年が弁護士との面会を希望した場合には,少年に経済的負担をさせることなく弁護士付添人を付ける運用を行ってきた。そして,本年6月,当会はこの制度を拡大し,少年鑑別所に収容されたすべての少年が弁護士との面会を希望した場合,当番付添人が速やかに面会に赴き,面会を行った弁護士が上記日弁連の援助事業を利用してそのまま付添人として受任する全件当番付添人制度をスタートさせた。この当番付添人制度により,少年審判における弁護士付添人選任率が飛躍的に増大することが見込まれ,少年の立ち直りに向けた多くの成果が期待できる。
しかしながら,適正手続を確保しつつ少年の健全な育成を図ることは,本来国の責務であり,国費によって全面的な弁護士付添人制度が運営されるべきである。わが国が批准している子どもの権利条約第37条(d)は,「自由を奪われたすべての児童は,・・・弁護人その他適当な援助を行なう者と速やかに接触する権利を有する」と定めている。弁護士会の会費によって支えられている現在の少年保護事件付添援助制度は暫定的なものに過ぎず,少年が国費によって弁護士付添人による十分な法的援助を受けられる制度を整備,拡充する必要がある。
よって,当会は,国に対し,国選付添人制度の対象事件を身体を拘束された少年の事件全件にまで拡大するよう,速やかな少年法の改正を求める。

以上
2010年7月20日
鹿児島県弁護士会会長 鳥丸真人

一覧へ戻る

ページのトップへ戻る
新型コロナウイルスの影響で借入金返済にお困りの方へ
無料法律相談カレンダーのご案内
法律相談会場のご案内
法律相談窓口
司法過疎地域巡回無料法律相談
ひまわりほっとダイヤル
ひまわりお悩み110番
弁護士無料派遣
災害特設ページ
鹿児島県弁護士会へのお問合せ
鹿児島県弁護士会会員ページへログイン
鹿児島県弁護士会CM