決議・声明
国鉄改革1047名問題の解決に関する声明
国鉄改革1047名問題について、2010年4月、政府は、民主党、社会民主党、国民新党及び公明党の4党から申入れのなされた解決案を受入れ、国鉄労働組合をはじめとする4者4団体は、政府から示された解決案を受入れた。
1987年の国鉄分割・民営化に際し、JR各社が国鉄分割・民営化に反対した7628名の労働組合員を採用せず、国鉄清算事業団が1990年4月にこのうち1047名を解雇した。これが国鉄改革1047名問題であり、解雇された組合員は、思想・信条による差別を禁じた日本国憲法、国際人権規約に違反するとして、雇用の回復と慰謝料の支払を求め、法的手続をとった。
全国17の地方労働委員会に不当労働行為救済の申立がなされ、地方労働委員会は不当労働行為を認めてJR各社が被雇用者として取り扱うよう救済命令を出し、中央労働委員会もこれを維持した。これに対し、JR各社が中央労働委員会の救済命令の取り消しを求める行政訴訟を提起した。東京地方裁判所は、救済命令を取り消す判決を言渡し、東京高等裁判所が控訴を棄却し、最高裁判所が上告を棄却してこれが確定した。裁判所は、労働委員会と異なる判断をしたが、これは採用差別の不当労働行為がなかったとしたものではなく、JR採用予定者名簿を作成した旧国鉄と採用を行ったJR各社は別人格であるとして、不当労働行為の責任については旧国鉄と国鉄清算事業団が負い、1047名についてJR各社には採用の責任がないというものである。
JR不採用問題が24年に及ぶ間、訴訟を提起した組合員のうちすでに61名が病気その他により亡くなっているが、組合員は、就学年齢の子どもを抱えながら、解雇によって生活の糧を失い、アルバイト収入で苦しい生活をつないできた。中には離婚によって家族が離散した組合員もいる。政治解決がなされた現在、組合員にとって、金銭的解決だけでなく、雇用の確保は切実な要請である。
この雇用の確保について、政府は、JR各社に対し人道的見地から強く要請するとの4党の申入れに対して、努力するというにとどめ、強制できないとしてあくまでJR各社の判断にゆだねる姿勢である。しかし、不当労働行為の責任がないという司法の判断があるとはいえ、JR各社は旧国鉄の多くの人的資源と物的設備や事業本体を引き継いでおり、国鉄とまったく無関係の組織として設立されたと言い切れない面がある。
よって、政府に対し、人道的な見地を徹底させ、組合員の雇用が確保されるよう、JR各社の自主的判断に任せずに、より積極的に指導し、助成措置を講じるなど、必要な施策を行うよう要請する。
2010年5月27日
鹿児島県弁護士会会長 鳥丸真人