決議・声明
奄美市における防犯カメラの設置に関し適正な運用等を求める声明
2009(平成21)年12月22日
鹿児島県弁護士会会長 森 雅美
警察庁は、2009年、子どもを犯罪から守る活動を展開している民間団体を支援するモデル事業として、小中学校の周辺、通学路や公園等に防犯カメラを設置する方針を決めた。モデル事業実施予定の全国14都府県15地区の中に、防犯カメラ設置地区として鹿児島県奄美市が選定され、防犯カメラの設置運用団体として奄美市のNPO法人が選定された。これを受けて、同団体では、防犯カメラを奄美市内の学校周辺、子どもの通学路や公園周辺等に設置するとともに、監視モニターを同団体の事務所に設置して、2010年2月から防犯カメラによる監視を実施予定とのことである。
ところで、全ての市民は、憲法上、プライバシー権・肖像権、言論・表現の自由を保障されているところ、何らの規制もないまま監視カメラが設置され、あるいはこれにより撮影されたデータが利用されるならば、市民のプライバシー権・肖像権は容易に侵害されることとなる。また、言論・表現の自由に対して萎縮効果を与える危険があることも明らかである。
鹿児島県においては、「鹿児島県犯罪のない安全で安心なまちづくり条例(平成18年鹿児島県条例第76号)」が制定され、これを受けて平成19年3月には「鹿児島県防犯カメラの設置及び運用に関する指針」が制定された。この指針では、上記条例に基づき防犯カメラを設置する場合において、設置者に対し、県民等のプライバシー保護に配慮した適正な運用を図るために必要な方針等が示されている。上記設置運用団体もこの指針を参考に運用基準を作成中とのことであるが、そもそも憲法上市民に保障されたプライバシー権・肖像権、言論・表現の自由の重要性に鑑みると、監視カメラの設置自体抑止的であるべきところ、監視カメラを設置・運用する以上、同団体に対しては早急に憲法上保障されている諸権利に十分配慮した運用基準を作成し、公開すると共に、同基準に沿った防犯カメラの適正且つ厳格な運用をなされるよう強く求めるものである。
さらに、プライバシー権・肖像権、言論・表現の自由の保護をより確実なものとするためには、単に設置運用者に対する規制だけでなく、その設置運用及びデータ利用が適正に行われているか否かを審査する第三者機関の設置もまた必須である。そこで、国や地方公共団体に対しては、防犯カメラによる監視が実施される前に、上記条例や指針には規定されていない中立的な審査を行う第三者機関を可及的早期に設置するよう求める。
以上