決議・声明
秘密交通権侵害国賠訴訟の判決についての会長声明
鹿児島地方裁判所は、平成20年3月24日、秘密交通権侵害国家賠償請求事件について、国および鹿児島県に対して、原告ら弁護士11名の全員に、捜査機関による弁護人の被疑者・被告人との秘密交通権の侵害があったとして、合計金550万円を支払うよう命じる判決を言い渡し、本判決は、国及び県が控訴を断念し、本日、確定した。
本判決が、被疑者・被告人との接見内容を聴取することは、原則として弁護人の接見交通権を侵害するとして、例外が認められる余地を残したことについては、尚不満が残るところではある。しかしながら、被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権は、弁護人の固有権であるとして、被疑者・被告人による放棄を認めなかったことや、結論として国及び鹿児島県の主張をすべて排斥したことは、今回の捜査機関の聴取行為に対して明確に違法であるとの判断を示したこととして鹿児島県弁護士会として評価できるものであることは平成20年3月24日の会長声明でも既に述べたところである。
この判決は、原告団及び弁護団の4年にわたる、訴訟活動等の結果勝ち取った努力の賜物であり、原告団及び弁護団に対し深く敬意を表するものである。
また、この判決が確定したことにより、原告である志布志公職選挙法違反被告事件の弁護人の弁護活動が適法なものであったことが、当然のこととはいえ改めて確認されたことは、鹿児島県弁護士会としてもたいへん喜ばしく思うところである。
鹿児島県弁護士会としては、本判決が確定したことにより、国と鹿児島県に対し、二度と被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権侵害を犯さないよう強く求める。
なお、本判決は、例外的に捜査妨害的行為等接見交通権の保護に値しない事情等特段の事情がある場合には接見内容を聴取しうるとしたが、鹿児島県弁護士会はこの特段の事情が捜査官によって恣意的に拡大解釈されることのないよう今後とも厳しく監視し、そしてまた個々の弁護活動においても秘密交通権侵害がなされないよう最大限の努力を継続する所存である。
平成20年(2008年)4月7日
鹿児島県弁護士会
会長 松下良成