決議・声明

志布志公職選挙法違反被告事件判決に対する声明

2007.02.23

1 本日、鹿児島地方裁判所は、2003(平成15)年4月13日に施行された鹿児島県議会議員選挙に関して、公職選挙法違反として起訴されていた被告人12名全員に対して無罪判決を言い渡した。

2 本件は、接見禁止付きの身柄拘束を長期間受けた被告人6名の自白の信用性が問題となった事件だけに、本判決でこれがすべて否定されたことは、被告人間の供述合わせのために自白の強要など、違法な捜査が行われたことを強く推認するものである。そして、見込み捜査によって、被告人らに嘘の自白を強要したえん罪事件であったことを物語るものである。
鹿児島地方検察庁および鹿児島県警察は、このような無罪判決の意味を真摯に受け止め、猛省すべきである。
鹿児島県弁護士会は、鹿児島地方検察庁および鹿児島県警察に対し、捜査は適正に行われたと強弁することなく、早急に本件の捜査過程を十分に調査・検証して、自浄作用を発揮し、このようなえん罪事件を再び繰り返さないための実効性のある再発防止措置を直ちに執るよう、強く求める。

3 本件において、検察庁および鹿児島県警察が自白獲得維持を目的として、被告人と弁護人との秘密交通権を組織的に侵害していたことが明らかとなっているが、秘密交通権は、捜査機関と対峙する被告人にとって極めて重要な防御方法であり、その保護の重要性、侵害の違法性は明らかと言うべきである。鹿児島県弁護士会は、検察庁および鹿児島県警察に対し、秘密交通権の重要性に鑑み、今後これを侵害しないための再発防止策を早急に策定し、この問題に真剣に取り組むよう強く求める。

4 本件において裁判所は、安易に逮捕状、勾留状を発付してきた。勾留に際しては接見禁止決定まで付したのである。
公判が始まってからも接見禁止決定を継続し、保釈請求を幾度も却下した。
しかし、本件は、6世帯20人程度の有権者しかいない集落に、4回にわたり200万円近くの現金がくばられた、という荒唐無稽なものである。その異常さからして、裁判所としてはより慎重に検討し判断をすべきであったし、またそれは十分に可能であった。にも拘わらず、安易に逮捕状、勾留状を発行し、接見を禁止し、保釈を却下した裁判所は、検察庁の言うがままにこれらを行ったと言うべきであるが、これでは裁判所の人権保障の砦たる役割を放棄したとのそしりを免れない。
また、本件では、その審理過程において、弁護人の秘密交通権を侵害して取得した情報を基に、公判期日を延期してまで国選弁護人を解任している。この手続に、本来関与すべきではない裁判官が関与しているところ、違法であったと言うべきであるし、裁判所の対応には重大な問題をはらんでいる。
さらに、裁判所は、判決において、自白の信用性を否定したところ、この判断自体はそれなりに評価しうるとはいえ、内容のほぼ一致する6名の自白に信用性が全くないというのであるから、より直截に、任意性を否定することこそが、適切な判断であったというべきである。
鹿児島県弁護士会は、裁判所に対し、その求められる役割を十分に自覚し、人質司法と評される現状を改善し、被疑者被告人の人権を侵害することのない、より適切な刑事司法を実現するために努力することを求める。

5 鹿児島県弁護士会は、これまでも取り調べの全過程の可視化(録画・録音)を求めてきた。それは、これまでも繰り返され、また本件でも行われた密室での違法な取り調べを防止するために、最も有効だからであり、かつ唯一の方法だからである。
そして、取り調べの可視化は、自白の任意性、信用性が争いとなった場合に、裁判の長期化の原因となる、捜査官と被告人の尋問という水掛け論的なやりとりを回避することができ、審理の迅速化にも資する。
裁判の長期化は、被告人が有する迅速な裁判を受ける権利に対する重大な侵害である以上、司法に携わる者としてこれを回避することに資する方策を採用するに躊躇すべきではない。
鹿児島県弁護士会は、本件判決を受け、改めて取り調べの全過程の可視化を強く求めるとともに、国民の賛同を求めるものである。

2007(平成19年)2月23日
鹿児島県弁護士会 会長 川村 重春

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