お知らせ
川内原子力発電所の運転停止を求める会長声明
1 2015年(平成27年)8月11日,九州電力株式会社は,川内原子力発電所1号機を再稼働させ,運転を開
始した。
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故によって,
原子力発電所において甚大な被害を発生させる過酷な原発事故が起こりうることが示された。また,ひとたび
原発事故が起きた場合には,被害が極めて広範に及び長期間にわたって継続することが判明した。
2 原子力規制委員会は,新しい規制基準への適合性を審査して九州電力株式会社の原子炉設置変更許可
申請等を許可したが,委員長自らがこれは安全性を審査したものではないと述べているように,川内原子力
発電所の絶対的な安全性が審査されたのではない。
特に川内原子力発電所の再稼働を巡っては,策定された基準地震動の甘さや周辺のカルデラ火山による
火砕流問題等について適切に認識されず,有効な対策がなされているとはいえない状況である。
このため,川内原子力発電所が再稼働される場合には,自然災害や人為的なミス等によって過酷な原発事
故が起こる可能性を否定できない。
3 そうであれば,川内原子力発電所を再稼働させる前提として,原子力発電所で過酷な原発事故が生じた場
合に周辺住民を確実かつ迅速安全に避難させ,その生命身体を守るための「実効性のある避難計画」が策
定されるべきことは明らかである。
しかしながら現状,鹿児島県等で策定されている避難計画には,周辺住民の避難の順序,病人や高齢者
等の避難弱者の避難方法,事故の際の風向き等を考慮した柔軟な避難経路の設定とその連絡方法,避難し
た住民の十分な受け入れ先の確保,避難の際の避難元と避難先の自治体間の連携等に大きな課題を残し
たままである。
報道によると,鹿児島県は,県バス協会・バス運行会社との間で,2015年(平成27年)6月26日,原発事
故に備え,周辺住民の避難に使うバスの運行について協力協定を結んだとのことである。
しかし,バスの運転手の被曝リスクの問題もあるため,バス運転手が協力するのは一般人の放射線の被曝
限度を下回る場合に限るとされており,避難計画についての問題点は解消されていない。
また,「実効性のある避難計画」の策定のためには,実際に避難訓練を行って避難に際しての課題を明確
にする必要があるところ,これも行われていない。
4 このような状態で川内原子力発電所の再稼働に踏み切ることは,膨大な数の周辺住民の生命及び身体を
原発事故の危険にさらすものであり,川内原子力発電所の立地する鹿児島県の弁護士会としてこれを到底
容認することができない。
したがって,当会は,九州電力株式会社に対して川内原子力発電所の運転を停止するよう,強く求めるもの
である。
2015年(平成27年)8月11日
鹿児島県弁護士会
会 長 大 脇 通 孝