決議・声明

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

2014.10.08

第1 趣旨
  当会は、先の通常国会で審議入りし、秋の臨時国会で審議中の「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」、以下「本法案」という。)の廃案を強く求める。

第2 理由
 1 本法案の概要
   本法案は、カジノ施設を含む特定複合観光施設(会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設)が、「観光及び地域経済の発展に寄与するとともに、財政の改善に資するものである」として、かかる施設の推進を「総合的かつ集中的に行うことを目的とする」(第1条)ものである。
また、本法案は、かかる施設を「民間事業者が設置及び運営をする」(第2条)ものとしている。
このように、本法案は、刑法185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて、一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。
 2 本法案の問題点
(1)暴力団・マネーロンダリング対策上の問題
   カジノ解禁により、暴力団に新たな資金源確保の機会を与え、暴力団による威力行使による被害を発生させ、また、カジノがマネーロンダリングに利用されることが容易に想定される。
   このような弊害を有効に防止することは困難である。
(2)ギャンブル依存症・多重債務者の拡大
   カジノ営業というものは、利益を上げるために、射幸心と陶酔感をあおり、できる限り多くの賭博をさせようとする性質のものである。
   かかるカジノの設置によってギャンブル依存症の患者が増加することは避けられない。ギャンブル依存症は、慢性、進行性、難治性の疾病であり、現在、日本において、予防や治療体制は十分ではない。
既に、公営ギャンブルが設置され、パチンコ産業も存在する我が国において、カジノ解禁により治療コストや労働意識の低下などのさらなる社会的損失が予想される。
また、カジノにより負けたものが、射幸心に煽られ、挽回のためにお金を借りてさらに賭けに挑み、その結果として、多額の債務を負うことは想像に難くない。
   カジノ解禁は、これまでの多重債務者対策に逆行するものである。
(3)青少年への悪影響
   本法案が予定している複合観光施設は、レクリエーション施設等と一体となった、いわゆる「統合型リゾート方式」であり、家族ででかける先に賭博場が存在することになる。
   青少年が、家族の娯楽の中で、賭博場の存在に馴染んでいくことになるため、賭博に対する抵抗感を無くしながら成長することになり、その悪影響は図り知れない。
(4)民間企業の設置・運営によることの問題
  本法案は、営利を追求する民間企業により、カジノを設置・運営するものとしている。しかし,本法案では民間企業が運営するカジノ施設における不正行為の防止や運営に伴う有害な影響の排除の措置は何ら具体的でない。そもそも,民間企業の設置,運営にかかるカジノについて公共の信頼を担保するのは困難といえる。

3 賭博禁止の理由
  我が国の刑法が賭博を禁じているのは「勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情により財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風・・・を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」(最高裁判決昭和25年11月22日)からである。
本法案が成立すれば,刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ,上記のような様々な弊害をもたらすことが大いに懸念される。

4 結語
  本法案が施行されれば、上述のような様々な弊害を招来する危険がある。カジノが「観光及び地域経済の振興に寄与」し「財政の改善に資する」ということには疑問を呈さざるを得ない。そのような期待のために、容易に想定される数多くの重大な弊害を招来する必要はない。
  よって、当会は、本法案の廃案を強く求める。

                                      2014年(平成26年)10月7日
                                           鹿児島県弁護士会    
                                              会長 堂 免  修

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